えっ!これもラジオ「おもしろラジオの世界」展
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えっ!これもラジオ「おもしろラジオの世界」展

タイトル写真はどう見てもおもちゃ屋さんのショーウィンドウですが、ここに並んでいるのはすべてラジオです。こんな「ラジオに見えない変わったラジオ」が「ノベルティラジオ」です。そんなノベルティラジオを集めた企画展「おもしろラジオの世界」(2018年)の展示品や解説をお届けします。

ノベルティラジオの世界

「ノベルティ:novelty」には、本来「珍品」という意味がありますが、現在では企業の宣伝を目的とした販促品を意味するようになりました。ブランドや商品名が入ったグッズすべてが含まれますが、この中に、パッケージや商品の形をしたラジオや、企業名入りのラジオなどがあります。

これらは1930年代から例が見られますが、1960年代まではラジオが高価だったこともあって販促品として作られることはほとんどなく、玩具や置物にラジオを組み込んだラジオが対米輸出用として日本の中小メーカによってたくさん作られていました。これらの一部は日本国内でも販売され、主に贈答品として活用されました。

販促品としてのノベルティラジオが大量に作られるようになったのはICを使った小型のラジオが簡単に作れるようになった1970年代後半くらいからで、主にアメリカで始まりました。アメリカや日本の会社のブランドであっても大半は香港、台湾などで作られています。この流行は日本でも始まり、1980年代に多くの飲料ボトルや缶などの形をしたラジオがキャンペーンの景品や記念品として配布されました。

販促品としてのラジオの他に、キャラクターグッズや玩具、また、通常ラジオとは組み合わせられないような品物にラジオを組み込んだ変わったラジオもノベルティラジオの一種とされています。

ごく普通のラジオにマークやキャラクターをプリントしたり、記念の文字を入れたりしたものもノベルティには違いありませんが、この展示では取り上げませんでした。あくまでも変わった、楽しいものを選びました。

このようなノベルティラジオは1990年代からコレクションの対象となった新しい分野です。今回の特別展では、ノベルティラジオの膨大なコレクションを委託/寄贈いいただいた故柴山勉様、故戸井田義徳様のコレクションから整理、登録が完了した逸品を多数展示させていただきました。改めてこの場を借りてお礼申し上げます。

1950年代以前 変わったラジオの歴史

「ラジオに見えないラジオ」を作ってみたいという思いは、ラジオ放送が始まったころからありました。それはインテリアにさりげなく溶け込むような本の形をしたラジオであったり、工作の技術の粋をつぎ込んだ住宅模型のラジオだったりしました。

真空管式のラジオは大きく、発熱もあるのでいろいろなものに仕込むのは簡単ではありませんでした。それでも1920年代からぬいぐるみや人形の中にラジオを仕込んだものが作られています。こういった古い時代のノベルティラジオは生産数も残存数も少なく、現在では入手困難です。今回は、貴重な1920年代の住宅模型型ラジオを展示しました。

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40㎝角の大きな住宅模型ですが、100年近く前の変わり種ラジオです。正面の壁にツマミがあり、玄関の上の窓にスピーカが覗く構造です。外側は精巧な金属細工でできています。残念ながら、中の機械はほとんど失われています。

もう一つの変わり種ラジオの分野として、電気スタンドにラジオが付いたもの、ラジオに時計が付いたものなどの複合商品があります。電気スタンドにラジオが付いたものは変わった形のものが多いのですが、時計付ラジオは、ラジオのパネルに時計が付いただけのものが大半で、変わり種とまではいかないものが多いため、今回の展示では時計付ラジオは取り上げていません。

戦後になっても小住宅模型とぬいぐるみは、変わり種ラジオの主要テーマで、多くのアマチュアが製作に取り組んだものですが、真空管時代にはメーカが生産することはほとんどありませんでした。

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住宅型、電気スタンド型、ボトル型など、戦前から50年代までの変形ラジオの数々。上段の住宅型は手作り品で、ラジオを組み立てる技術よりも木工の腕が要求されます。ボトル型のラジオはアメリカのRDRという会社が終戦直後に作ったもの。この会社はアメリカの情報部向けにスパイ用の特殊な小型ラジオを作っていたのが戦争が終わって仕事がなくなり、技術を生かしてボトルにラジオを仕込んだラジオをノベルティ用に作ったものです。

日本では1950年代後半、特に1956年から57年にかけて、ユニークなアイデアのラジオが一流メーカから数多く発売されました。テレビが普及の兆しを見せ始めたころで、ラジオが爛熟期を迎えていたが故でしょう。

1960年代 ノベルティラジオのはじまり

ラジオのトランジスタ化はラジオ本体を小型化、低消費電力化し、乾電池で使えるようになりました。このため、小さなトランジスターラジオの基板は簡単にさまざまなものの中に収めることができるようになりました。

それでも、この時代はまだラジオが高価だったので、贈答品として使われる置き物や卓上ライターに組み込んだもの、自動車の販促品など付加価値の高いものが主流でした。

面白ラジオ展2

1960年代のノベルティラジオの数々。国内で市販されたバンダイの「ワンワンラジオ」(写真左上)は、犬のぬいぐるみにAMラジオが仕込んであるものですが、普通のぬいぐるみが数百円で買える時代に4,300円もしたので、箱には「恋人へのプレゼントに」とあります。これをプレゼントされた彼女はうれしかったのでしょうか?
念のためにもう一度言いますが、これらはすべてラジオです。ただ、この中にホンモノのテレビが1台混ざっているのですがわかりますか? 

1970年代後半に入るとラジオの多くが香港や台湾で作られるようになり、非常に安価になりました。このため、販促品として飲料の瓶や缶、タバコ、カップラーメンやお菓子のパッケージの形をしたラジオが作られ、クイズや懸賞の賞品などになりました。

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有名な食品や飲料の形をしたラジオ。ほとんどが販促品として使われました。中央のアサヒビールの缶は、やけに大きいようですが、これは当時本当にあった1リットル缶の缶ビールです。飲みにくいためか、すぐになくなりました。隣のワンカップ形のラジオはプラスチック製ですが、ガラス製の本物と重さを合わせてある念の入れようです。何度も言いますが、全部ラジオです。日本では少ないのですが、オーナーが車の整備をするアメリカではオイル缶形、バッテリー形など自動車用品のラジオもたくさん作られています。

1980-90年代 ラジオ付きおもちゃやキャラクターラジオの時代

1980年代以降も商品パッケージの形をした販促用のラジオは作られますが、どちらかというと自動車や飛行機などの模型の中に仕込んだものや、ジュークボックスや蓄音機の形をしたラジオ、商品型のようでもブランドのない食品の形をしたものなど、安価なおもしろグッズとしてのノベルティラジオが多い時代です。ディズニー、スヌーピー、スターウォーズなどのキャラクターグッズとしてのラジオもこの時代に数多く作られました。

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キャラクター商品のノベルティラジオ。下段は主に日本のキャラクターですが、こうしてみると、ディズニーやハリウッド映画、スヌーピーといったアメリカのキャラクターの強さが良くわかります。しつこいようですが、全部ラジオです。

1980年代まではラジオを備えた多くのアイデア商品が登場しましたが、最近は見られなくなっています。ネットでラジオが聞けるようになった時代、ラジオが聴けるということが付加価値としてあまり認められなくなったからではないでしょうか。

ポスター

ポスターに記載の住所、電話番号は開催当時のものです。

企画展概要

企画展名:
企画展「おもしろラジオの世界」(2018年)

開催期間:
2018年3月17日~2019年1月11日

館長のひとりごと

特別展も8回目になり、いつも固い内容の歴史をテーマにしたものばかりだったので、ちょっと肩の力を抜いたものにしてみようと思いました。

ちょうどお二人のベテランのコレクターの遺品として、段ボール20箱にもなる大量のノベルティラジオが収蔵されました。私はあまりこの分野に興味がなく、自分ではほとんど集めていなかったのですが、とりあえず並べてみることにしました。

これがいつものように1点ずつきれいに並べてみても、一つ一つが小さいせいでしょうか、なんとも面白くないのです。そこで品物はとにかくたくさんあるので、似たようなものに分けてガラスケースに思いっきり詰め込んで並べてみたところ、子供部屋の棚のようになってすごく楽しくなりました。これがタイトルの写真です。

あまりにも展示品が多すぎたので、今回は細かい目録作りはあきらめました。それでも整理してみると、どうやら60年代の古いものから90年代まで揃っているようです。

年代順に並べてみると、思っていなかった「ラジオを聴くことの価値」がノベルティラジオの変遷に現れていることに気が付きました。庶民に近いところにある販促品や面白グッズとしてのラジオは、世相を反映しているのだと気づかされました。こんな素材でもラジオの歴史を語れるのだと感心した次第です。

そんないつもの「裏テーマ」はともかくとして、お子さんにも楽しんでいただける企画展になりました。


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日本でラジオ放送が始まって95年を超えました。当館では日本製のラジオを中心にオーディオ機器など歴史的に貴重な製品及び関連資料を、放送の歴史の流れに沿って分類、整理してネット及び長野県松本市の博物館で公開しています。タイトル写真は展示室の様子です。